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緩和ケア科

89歳女性、腰部脊柱管狭窄症 (順天堂大学医学部麻酔科緩和ケア 高橋良佳)

概要

80歳頃より右足底の軽いしびれを自覚していた。87歳頃から右下腿の痛みや筋肉が突っ張るような症状も出現し、徐々に悪化している。数か月前からは右下肢後面の痛みやしびれも出現し歩行で悪化するため、趣味である旅行に行けなくなってしまった。15分程歩いていると痛みが徐々に強く足が重くなってきて、しばらくかがんで休むとまた歩くことはできる。夜間に下肢のこむら返りで目が覚めてしまうこともある。娘に付き添われて当院ペインクリニック外来を受診。

初診時現症

<一般身体所見>
独歩で入室。杖やカートの使用なし。視診上、下肢に水疱や皮疹なし。右下肢後面の痛みとしびれ、NRS(Numerical Rating Scale): 7、前屈や安静で軽快、歩行や寒さで増悪する。神経学的には、右前脛骨筋、右長拇趾伸筋・屈筋で軽度筋力低下を認める。明らかな感覚障害は認めない。下肢腱反射正常。両足背動脈蝕知良好。

主な検査所見など

【主な検査所見など】   
<血液検査>
血算で軽度貧血を認める。生化学所見は異常なし。

<画像検査>
腰椎レントゲン:第5腰椎(L5: Lumbar Spine), 第1仙髄(S1: Sacral Spine)に骨棘形成を認める。第4腰椎に前方すべりを認める。
腰椎MRI(Magnetic Resonance Imaging;磁気共鳴画像):L4/5, L5/S1に右優位の両側椎間孔狭窄を認める。

診断と鑑別診断

加齢性変化に伴う脊椎変性疾患を疑い、身体所見と疼痛部位に一致する腰椎MRI所見より、腰部脊柱管狭窄症と診断した。鑑別として下肢の血行障害も挙げられるが、両足背動脈触知良好であったこと、下肢の冷感がないこと、糖尿病や高血圧の既往もないことから否定的と考えた。

治療方針

患者と家族には腰部脊柱管狭窄症によるL5とS1領域の右側の神経根症状が出現していること、そのために痛みやしびれ、夜間のこむら返りが出現していることを説明した。」治療方針として、腰部硬膜外ブロックを施行し、並行して薬物療法として神経障害性痛にプレガバリン25㎎1錠、夜間のこむら返りに対して芍薬甘草湯1包より開始した。腰部硬膜外ブロックを5回施行した時点で痛みは初診時の半分以下になった。プレガバリンの副作用である眠気やふらつきもなく夜もよく眠れ、しびれの緩和が見られたため緩徐に増量し、75㎎1錠で継続投与中である。

治療経過の総括と解説

【腰部脊柱管狭窄症の治療経過の総括と解説】   

腰部脊柱管狭窄症は50-70歳に高頻度に見られ、高齢化に伴って頻度が高くなる。様々な原因で脊柱管、椎間孔の狭窄が生じ、腰下肢や会陰部に痛みやしびれ、感覚低下などを引き起こす。鑑別としては閉塞性動脈硬化症やバージャー病などの末梢血行障害が挙げられる。
また、本疾患は高齢者が多いため、画像診断の際には悪性腫瘍や圧迫骨折なども見逃さないようにする。

神経性間欠跛行の病型分類として神経根型障害、馬尾型障害、混合型障害があり、神経根型障害は比較的治療反応性が良いことが多い。一方、馬尾型障害は殿部、会陰部の異常感覚や膀胱直腸障害を訴え、治療抵抗性であることが多い。

本症例は神経根型障害と考えられ、神経ブロックの効果が高かった。重症例では手術が適応になることもあるが、筋力低下や廃用を予防する意味でも理学療法の介入も有用である。

参考文献