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緩和ケア科

83歳男性、帯状疱疹後神経痛 (順天堂大学医学部麻酔科緩和ケア 高橋良佳)

概要

1か月前に右上肢に水疱を伴った皮疹が出現し、かかりつけの近医内科で帯状疱疹と診断され、抗ウイルス薬とロキソプロフェンを処方された。1ヶ月も経つが痛みが強く、服を着脱する際にも服が触れただけでも痛む。夜も痛みで目が覚めてしまうことがある。ロキソプロフェンははじめの頃は効いていたが、今は内服しても痛みが楽にならない。右手が利き手であり、日常生活動作も不便を感じる。帯状疱疹にかかったことのある知人に紹介されて当院ペインクリニック外来を受診した。

初診時現症

<一般身体所見>
右第6頚椎領域に感覚低下、アロディニアを認める。水疱はなく全て痂皮化している。NRS(NRS: Numerical Rating Scale) 8、ひりひり灼ける様な、針で刺されたような痛み。持続痛に加えて一日に3,4回電撃痛がある。

主な検査所見など

【主な検査所見など】   
<血液検査>
血算・生化学所見は異常なし。

診断と鑑別診断

水疱に引き続く神経支配領域に沿った痛みであり、感覚低下やアロディニアを伴っていることから、典型的な帯状疱疹関連痛と考えられる。
右上肢の頚椎領域の痛みは頚椎症性神経根症も鑑別に挙げられるが、本症例では経過から考えにくい。頚椎症の診断にはスパーリングテスト, ジャクソンテストなどの疼痛誘発テストに加えて頚椎レントゲンや頚椎CT, 頚椎MRIを撮影すべきである。

治療方針

患者には帯状疱疹関連痛であること、一般的な帯状疱疹罹患後の痛みの経過を説明し、薬物療法としてプレガバリン25㎎1錠を投与した。

また、帯状疱疹の急性期~亜急性期であり、痛みも強く夜も眠れないため、腕神経叢ブロックを施行した。プレガバリン内服後、めまいと下肢のむくみが出現したため投与中止。アミトリプチリン10㎎1錠を眠前より開始。副作用発現見られなかったため増量とした。

治療経過の総括と解説

腕神経叢ブロック3回と内服により痛みは徐々に緩和され、現在は神経ブロックを中止し、アミトリプチリン25㎎1錠/1xを内服継続中である。帯状疱疹関連痛は増殖したウイルス量と痛みの程度は相関すると言われているため、早期の抗ウイルス薬投与が推奨される。高齢者、ステロイド使用、免疫抑制剤使用、悪性腫瘍などは危険因子であり注意が必要である。帯状疱疹ウイルスは神経節に潜伏し、宿主の免疫力が低下すると神経に沿って増殖し神経を傷害するため、皮疹が痂皮化して治癒した後も、10%程度の患者では痛みや感覚低下を残す。皮疹出現から3か月以上経過しても残る痛みを帯状疱疹後神経痛と呼び、神経障害性疼痛ガイドライン1)に沿って治療されるが、難治性であることも多い。また、痛みが緩和されてもかゆみや感覚低下が残存することもあり、初診の時点で帯状疱疹関連痛の経過を説明しておくことが肝要である。

参考文献

神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン 新興交易(株)医書出版部 20頁