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腎臓病

57歳女性、急性腎盂腎炎、右尿管結石、右水腎症 (同病院腎臓内科 麦島康司、酒井行直)

概要

【主訴】発熱

【現病歴】某年11月4日、39.8℃の発熱と尿の濁りを認めたため、11月7日、大学病院内科受診した。

【既往歴】19歳:腎盂腎炎、55歳:2型糖尿病(未治療)

初診時現症

〈一般身体所見〉
中肉中背で、体温38.2 ℃.胸腹部に理学的以上所見認めず、右背部を叩くと痛みを訴える。

主な検査所見など

〈血液検査〉WBC 12570 /μl、CRP 28.29 mg/dl、尿中WBC 3+と炎症高値であり、空腹時血糖 160 mg/dl、HbA1C(N) 7.4 %と血糖高値を認める。他、血算生化学検査に異常を認めない。

〈画像検査〉腹部CT:右尿管結石、右水腎水尿管症、右腎周囲の脂肪織の乱れを認める。

診断と鑑別診断

右の腰を叩くと痛みがあり、血液検査で炎症所見高値、尿検査にて尿の感染症の所見を認め、尿路感染症が強く疑われた。また、腹部CTを施行したところ右尿管に結石あり、それにより右腎臓に尿の鬱滞(右水腎症)を認め、右尿管結石が尿管を詰めたことにより発症した急性腎盂腎炎と診断した。

治療方針

尿路に結石が詰まり尿が鬱滞したことによる急性腎盂腎炎の場合は、尿の鬱滞を解除しないことには、抗菌薬のみを投与しても改善が乏しい。なので、至急泌尿器科に相談し、尿管カテーテルの留置を行い、尿路の鬱滞を解除し、栄養剤の点滴・抗菌薬(セフトリアキソンナトリウム 4g/日)の投与を開始した。その後、入院4日目には解熱し、炎症所見の改善を認め、入院16日目より抗菌薬の点滴から内服に変更し、入院19日目には状態安定し退院とした。退院後、泌尿器科にて経尿道的結石破砕術(石を破砕し、取り除く治療)を行い、良好に結石の除去ができている。

治療経過の総括と解説

腎臓は血管の塊の臓器であり、腎臓の感染症は悪化すると、全身の血管に菌が移行し(敗血症)、重篤になりうる疾患である。本症例は尿路結石を契機に腎盂腎炎を発症し、尿管カテーテルを留置後、点滴、抗菌薬にて改善した症例である。本症例のような糖尿病患者においては、約5倍腎孟腎炎に罹患しやすいとされ、敗血症を併発することもしばしばである。特に、尿路閉塞を伴うような腎孟腎炎は重症化し、抗菌薬治療だけでは治癒しえないため、腎瘻(じんろう。腎臓に直接、管を刺し、尿を排出する方法)や尿管カテーテルなどの通過障害解除を同時に施行しながら、加療を行うことが大切である。

参考文献