医師自身による中医学 Herbal Medicine(漢方)とAcupuncture(鍼灸)

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千葉北総病院 緩和ケア科

79歳男性、難治性がん疼痛にくも膜下皮下ポート 日本医科大学千葉北総病院 井上大輔

概要

1年前、根治手術不能原発進行食道癌(StageⅣb)の頚部リンパ節転移により化学放射線療法を開始し、翌年、外来経過観察中このような多発脊椎転移が見つかり脊椎に放射線療法を施行.その後頚部リンパ節転移巣の増大と多発脊椎転移による疼痛が悪化し、フェンタニル貼付薬とモルヒネ皮下投与など医療用麻薬を徐々に増量した (モルヒネ内服換算1000mg/日)。しかし、ペインコントロール不良で傾眠が増悪したため、くも膜下皮下ポートを作成した。直後から痛みが改善し、その2ヶ月後に永眠した。

初診時現症

〈一般身体所見〉
脊椎転移による腰痛と頚部リンパ節転移による頸部の疼痛が進行。
中肉中背でバイタルに著変なし。胸腹部に理学的異常所見なし。神経学的には、四肢の麻痺はない。振戦や筋強剛などのパーキンソニズムはない。

【本人・家族の意思】
家に帰りたい、眠くなるのはいや、痛みで首が動かない、化学療法などの辛い治療をしたくない。

主な検査所見など

〈血液検査〉
血液一般血算生化学所見は異常なし。アンモニア正常、甲状腺機能正常。
〈認知機能検査〉
MMSE=25(mini-mental state examination満点30)
HDS-R=27(長谷川式簡易知能評価スケール満点30)。
〈画像検査〉
脊椎MRI(Magnetic Resonance Imaging;磁気共鳴画像):多発性脊椎転移像。
 

診断と鑑別診断

【診断】根治手術不能原発進行食道癌(StageⅣb)  

頸部・背部激痛

頸部・背部激痛.docx

治療方針

食道癌,頚部リンパ節転移と診断され,病状の進行とともに,痛みが増悪,オピオイドを増加したが,モルヒネ皮下投与120mg/日+フェンタニル貼付薬7.2mg/日(フェントステープR24mg)に加え、モルヒネ座薬を用い、オピオイド総量はモルヒネ経口換算約1000mg/日と大量になったが、疼痛コントロールは不良(NRS:10/10)。
眠気が強いためくも膜下皮下ポートを挿入し、くも膜下腔へモルヒネ12mg/日,ブピバカイン6mg/日の持続投与を開始したら、翌日から痛みが改善し(0/10)、1週後には屈曲していた頸部の伸展が可能となった。傾眠傾向も改善し歩行も可能となったが.ポート作成後2ヶ月で永眠した。

治療経過の総括と解説

【脊椎転移の特徴】
 脊椎転移では,脊髄の圧迫が急速に進行し神経根痛に続いて、運動障害、感覚障害、膀胱直腸障害へと進展することがある。脊髄圧迫は全がん患者の5-10%(がんの診断後6-12.5ヶ月後に多くが出現)で、胸髄が60%、腰仙髄が30%、頸髄10%の頻度で現れる。骨転移に対する照射はできるだけ早く開始することが大切。特に脊柱の転移病巣が脊椎管内に進展すると、急速に神経麻痺が進行するため、麻痺の徴候が認められたら24時間以内に開始することが望ましい。
脊椎の骨転移では四肢骨に比べ放射線治療には悪心・嘔吐、下痢といった消化器症状や骨髄抑制、肺炎といった重篤な副作用を伴うことが多い。

【神経ブロック療法(オピオイドの硬膜外・くも膜下持続投与)の意義】(図)
本症のように骨転移痛では侵害受容性疼痛(体性痛)に加え、神経障害性疼痛が混在している場合が多いため、オピオイドが効きにくく、ペインコントロールが難しい。
オピオイド大量投与でも鎮痛できない場合には、オピオイドの硬膜外・くも膜下持続投与は効果的で、これは硬膜外腔やくも膜下腔へ投与されたオピオイドが、髄液に混じって脊髄後角部に到達し、脊髄膠様質のレセプターに特異的に結合し、substance Pなどの発痛物質の放出を抑制するためである。
経口モルヒネの薬物力価を1とすると,硬膜外投与は10倍,くも膜下投与では100倍となる.
オピオイドの硬膜外・くも膜下持続投与の適応は、オピオイド大量投与でも鎮痛できない場合や,腎不全でオピオイドの減量が必要になった場合などが対象になり、硬膜外・くも膜下カテーテルを皮下に埋め込み、ポートを作ることで感染を減らすことができる.(図)

参考文献