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アレルギー膠原病内科

82歳女性、リウマチ性多発筋痛症   福栄亮介、鏑木誠、桑名正隆

概要

2週間前から37.7度の発熱が出現。両側の肩周りの痛みも出現し、洗濯物を干す際など腕を挙げる事も出来なくなった。特に朝には痛みが強く、起床に1時間近くかかった。接骨院や整形外科も受診したが検査では異常なく、筋肉痛や五十肩と言われ、消炎鎮痛薬の内服薬と湿布を処方されるのみであった。しかし、症状が改善せず活気がなくなってきた事を家族が心配し、当院リウマチ膠原病内科外来を受診した。 

初診時現症

<一般身体所見>
発熱あり。側頭動脈の拍動の触知は良好。
胸腹部に異常所見なし。四肢に浮腫なし。
筋力低下や麻痺など神経学的異常所見はなく、痛みのため両側肩の挙上が困難。両側三角筋に把握痛あり。両側臀部から大腿後面にも自発痛および把握痛あり。
手指関節などの小関節に腫脹、圧痛はみられない。

主な検査所見など

<血液検査>
血沈亢進、白血球上昇、CRP 上昇。CPK正常。
抗核抗体陰性、リウマトイド因子(RF) 陰性、抗CCP抗陰性、MMP-3上昇
<画像所見>
手関節・肩関節X線:異常なし
両肩関節エコー:上腕二頭筋長頭腱周囲に液体貯留、三角筋下滑液包に液体貯留
側頭動脈エコー:側頭動脈に異常なし

診断と鑑別診断

高齢者に炎症反応高値を伴う両側肩痛であり、まずリウマチ性多発筋痛症(Polymyalgia Rheumatica; PMR)を疑う。朝のこわばりは45分以上持続し、肩関節以外に明らかな症状は見当たらない。血清反応も陰性で、肩関節エコーでは腱鞘滑液包炎を示唆する所見が得られた。一方、小関節などに関節腫脹はみられず、血液検査を含め関節リウマチや筋炎を積極的に疑う所見はない。以上より、PMRの診断とした。

治療方針

PMRにはステロイドが著効する。プレドニゾロン15mg/日から開始した。

治療経過の総括と解説

【PMRの特徴的な症状と検査所見】
PMRは高齢者に生じる疾患で、強い炎症反応を伴う両側肩痛であり、比較的急性〜亜急性に発症し、2週間程度で症状が完成する経過をたどる。うつ様症状を伴う場合もある。PMRはRF、抗CCP抗体などの血清反応は陰性で関節レントゲンで骨びらん等の関節、骨破壊はみられない。筋痛があっても筋炎と異なり、CPKなどの筋原酵素は上昇しない。
一部の患者は巨細胞性動脈炎を合併する。
【標準的な治療】
少量ステロイド内服後、短期間で症状の改善がみられるが、再燃が多いためステロイドは慎重に漸減しなければならない。ただし、巨細胞性動脈炎合併例では失明のリスクも高く、大量ステロイドが必要である。
【診療における高齢者特有の対処】
①高齢者におけるPMRの特徴
発熱、うつ、食欲不振などの非特異的症状が前景に立ち、しばしば診断しにくい。また、高齢発症の血清反応陰性RAとの鑑別は難しい場合もあり、ステロイド反応性を含めた経過観察が必要な場合がある。
②高齢者におけるPMR治療の注意点
もともと免疫機能が低下している上にステロイドにより易感染性が増し、感染リスクが増大するため感染予防の徹底させる事は重要である。また、高齢者は複数の疾患・合併症を持ち、特に糖尿病のある患者にステロイドを投与すると血糖コントロールが悪くなるため注意が必要である。
【治療経過】
この症例の場合、少量のステロイドに対する反応性が良好で、投与翌日より発熱は改善、肩周囲の疼痛も消失した。その後、炎症反応も速やかに改善した。外来で慎重にステロイドを漸減中であるが、症状の再燃なく経過良好である。

参考文献