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泌尿器疾患

72歳男性、脳梗塞による過活動膀胱 (武蔵小杉病院 泌尿器科 堀内和孝)

概要

1年前に脳梗塞に罹患したがリハビリを行い、現在は、右半身に軽い麻痺が残るが日常生活に大きな支障はない。しかし、脳梗塞発病後から頻尿になり、尿を我慢しにくくなり、トイレに間に合わないこともある。神経内科医から泌尿器科専門医を受診するよう勧められ、当院泌尿器科を受診した。

初診時現症

中背痩せ型でバイタルサインは正常。胸腹部に理学的異常所見なし。
右半身に軽い麻痺がある以外は明らかな神経学的異常所見なし。
<国際前立腺症状スコア:IPSS(0~35点)>
問診により、蓄尿症状スコア(0-15)は12点、排尿症状スコア(0-15)は6点、排尿後スコア(0-5点)は1点で合計IPSSは19点。QOLスコア(0-6点)は6点。

主な検査所見など

尿中潜血(-)、タンパク(-)、糖(-)、ウロビリノーゲン(-)、pH 6.0。尿沈渣では赤血球・白血球は1/HPF(強拡大)以下、上皮(±)、結晶(-)。
<血液検査>
血算、生化学検査は正常。
血清PSA(前立腺特異抗原)値は2.5ng/mlと正常。
<直腸内触診>
大きさはくるみ大、硬さは弾性軟、中心溝も触知できた。
<前立腺超音波検査>
経腹的エコーでは前立腺推定体積は20ccで腫大なし。
<尿流測定>
最大尿流率は12ml/秒、残尿10cc。
<膀胱内圧測定>
100mlで初発尿意があり、180mlで排尿筋の無抑制収縮を認めた。

診断と鑑別診断

超音波検査で前立腺肥大症はなく、血清PSA値も正常のため、前立腺肥大症による蓄尿障害は考えにくく、前立腺癌の可能性も低い。脳梗塞後に発現した蓄尿障害であり、膀胱内圧測定の結果からしてもこの症例の蓄尿症状は脳梗塞に伴う過活動膀胱(Over Active Blabber: OAB )である。
過活動膀胱は週に1回以上の尿意切迫感(尿をしたくなると我慢が難しい)を必須とし、頻尿、切迫性尿失禁(尿をしたくなると我慢ができずに漏れてしまう)を伴う蓄尿症状である。

治療方針

前立腺肥大症などに伴う非神経因性過活動膀胱による過活動膀胱症状には、抗コリン薬以外に、交感神経β3受容体作動薬、交感神経α1受容体遮断薬、PDE5阻害薬なども有効であるが、この症例は脳梗塞に伴う排尿筋過反射を起こしているため、抗コリン薬が適応である。

治療経過の総括と解説

過活動膀胱には神経因性過活動膀胱(神経因性膀胱に伴う排尿筋過反射)と非神経因性過活動膀胱(神経障害のない不安定膀胱)がある。神経因性過活動膀胱の原因疾患として脳梗塞・パーキンソン病などの脳疾患、脊髄損傷・多発性硬化症・脊椎変性疾患などの脊髄・脊椎疾患、糖尿病などによる馬尾・末梢神経疾患がある。脳疾患では大脳皮質から橋にある排尿中枢への抑制が効かないために尿が溜まると自分の意志とは無関係に排尿筋が収縮してし、蓄尿症状が出現する。非神経因性過活動膀胱の原因としては、前立腺肥大症などの下部尿路閉塞、女性の骨盤底筋障害、加齢に伴うものなどがある。

参考文献