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泌尿器疾患

75歳男性、前立腺癌 (武蔵小杉病院 泌尿器科 堀内和孝)

概要

父親が75歳の時に前立腺癌の手術を受けていたので気になり、今回、健診のオプション項目に加えた前立腺特異抗原(PSA)値が12.5ng/mlと高値であった。健診医から専門医の受診を勧められ、当院泌尿器科を受診した。若い時くらべれば尿の勢いが弱くなっていたが、年齢のせいを思い、今までに泌尿器科受診をしたことはなかった。10年前から2型糖尿病に対して内服治療を行っている。また、1年前に心筋梗塞になり、冠動脈にステントを留置され、現在、抗血小板薬2剤を服用している。

初診時現症

<一般身体所見>
中肉中背でバイタルサインは正常。胸腹部に理学的異常所見なし。
神経学的異常所見なし。
<国際前立腺症状スコア:IPSS(0~35点)>
蓄尿症状スコア(0-15)は2点、排尿症状スコア(0-15)は5点、排尿後スコア(0-5点)は1点で合計IPSSは8点だった。

主な検査所見など

<尿検査>
尿中潜血(±)、タンパク(+)、糖(+)、ウロビリノーゲン(-)、pH 5.5。尿沈渣では赤血球・白血球は1-4/HPF(強拡大)以下、上皮(-)、結晶(-)。
<血液検査>
血清PSA値は14.3ng/ml、血清クレアチニン値が1.89mg/dl、空腹時血糖110mg/dl、HbA1c6.4とやや高値。
<尿流測定>
最大尿流率は12.3ml/秒、残尿10cc。
<直腸内触診>
大きさは超クルミ大、両側に硬結を触れた。
<前立腺超音波検査>
経直腸的前立腺エコーで移行領域の腫大はなかったが左右辺縁境域に低エコー域があり、ドップラエコーでは低エコー域に一致して血流の増加を認めた。

診断と鑑別診断

尿流測定、IPSSでの明らかな排尿症状がないため、PSA値の上昇は前立腺肥大症に伴うものではなさそうである。そこで経直腸的前立腺エコーを施行すると前立腺肥大症に特徴的な移行領域の腫大はなく、左右辺縁境域に低エコー域があり、ドップラエコーでは低エコー域に一致して血流の増加を認めたため、前立腺癌が疑われた。

治療方針

確定診断のため、抗血小板薬2剤を生検施行5日前から中止して、ヘパリン置換を行い、局所麻酔で超音波下経直腸的前立腺針生検を行った。病理組織所見は14本中6本(両側)からグリーソンスコア:4+4=8の前立腺癌を認めた。
前立腺MRIでは被膜・精嚢線浸潤はなかった。全腹部・骨盤CT、骨シンチグラフィーで明らかな他臓器・リンパ節転移、骨転移は認めなかった。以上から臨床病期B(TNM分類:T2N0M0)の前立腺癌と診断した。
臨床病期Bの前立腺癌に対する治療方法の選択肢には手術療法、放射線療法、ホルモン療法がある。本人、家族とよく話し合い、高齢で糖尿病があり、抗血小板薬2剤を服用していることを考慮し、ホルモン療法を行うことにした。

治療経過の総括と解説

前立腺は膀胱の直下にあり、精液の約30%を占める前立腺液を分泌しているクルミ大の器官である。前立腺癌患者の90%以上は60歳以上で、70歳以降に発症率が高まる。現在、本邦での罹患率は胃癌、大腸癌、肺癌についで男性では4番目に高い癌である。
 初期の自覚症状は前立腺肥大症と似ており、前立腺癌に特異的なものはない。転移は骨・リンパ節(80%)、肺(60%)、肝臓(40%)に多い。診断には前立腺特異抗原(PSA)測定(年齢別基準値は50-64歳:3.0ng/ml以下、65-69歳:3.5ng/ml以下、70歳以上4.0ng/ml以下)、直腸診、経直腸的超音波検査を行う。この中でひとつでも異常を認めたら、前立腺生検を行い、組織学診断を行う。組織学的悪性度は前立腺癌の組織像の多様性を考慮して量的に最も優位なパターンとそれより劣勢なパターンの数の合計(グリーソンスコア:1+1=2~5+5=10)で表現する。
 生検で癌が確定したら、MRI検査で局所浸潤の有無について、CTでリンパ節や他臓器の転移の有無について、骨シンチグラムで骨転移の有無について検査して、臨床病期(限局性癌、限局浸潤癌、周囲臓器浸潤癌・転移癌)を決定する。
主な治療法として、待機療法、手術療法、放射線療法、ホルモン療法、化学(抗癌剤)療法がある。年齢、合併症の有無、組織学的悪性度癌を考慮して治療法を決めるが、限局性癌にはすべての治療法、限局浸潤癌には放射線療法+ホルモン療法、周囲臓器浸潤癌・転移癌にはホルモン療法または化学(抗癌剤)療法が選択肢となる。

参考文献