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眼科症例

81歳男性、加齢黄斑変性症 (武蔵小杉病院 眼科 鈴木久晴)

概要


 数週間前から左眼の視力が低下し、物が歪んで見えるとのことで、当院を受診した。今までに、高血圧、狭心症があり内科で加療中である。若いころから喫煙をしており、一日に20本のたばこを吸っている。また、食生活では野菜はあまり好きではなく、どちらかというと肉中心の欧米型の食事が好きである。眼においては記憶する限り眼科受診歴はほとんどないとのこと、但し40過ぎから読書をするときは老眼鏡が必要となり不自由している。

初診時現症

視力:右=1.0(矯正不能)、左=0.1(矯正不能)
眼圧:右=15mmHg、左=15mmHg、
・散瞳検査を実施し、両眼に同程度の軽度白内障を認めた。
 ⇒右眼の視力が良いことから、視力低下の原因は白内障ではない。
・散瞳下にて倒像鏡を用い眼底検査を施行し、左眼に網膜の黄斑部に変性を認めた。
・OCT(網膜の断層撮影)を施行したところ、黄斑部に浮腫、色素上皮に異常を認め、
 加齢黄斑変性が疑われ、蛍光眼底造影検査を施行したところ、脈絡膜からの新生血管を認めた。

主な検査所見など

診断:・軽度の老人性白内障、加齢黄斑変性症
 鑑別:・黄斑上膜は鑑別診断とされるが、OCT検査より否定できる。 

右眼:正常な眼底、出血を認めず、造影剤の漏出を認めない。

左眼:黄斑部に出血を認め、
造影剤の漏出を認めることにより、新生血管が疑われる。


右眼:正常な網膜黄斑部の
断層撮影像


左眼:網膜の中に浮腫、色素上皮の乱れがあり、脈絡膜からの新生血管が疑われる。

診断と鑑別診断

【診断と鑑別診断】 
 診断:・軽度の老人性白内障、加齢黄斑変性症
 鑑別:・黄斑上膜は鑑別診断とされるが、OCT検査より否定できる。 

黄斑上膜は鑑別診断とされるが、OCT検査より否定できる。

症例2 画像.pdf

治療方針

OCTと蛍光眼底造影検査の結果、加齢黄斑変性症と診断できたため、抗VEGF(血管内皮増殖因子)の硝子体注射とした。また、右眼に対しての予防として、サプリメント、食生活の改善を勧めた。

治療経過の総括と解説

【加齢黄斑変性症の治療経過の総括と解説】
 本症例に対しては、確定診断後に抗VEGF硝子体注射を開始した。1か月に1回で3か月施行した後に結果を評価したが、残念ながら病状は進行し、視力は0.02まで低下した。また、1年後に右眼にも加齢黄斑変性症を発生し、同治療を施行した。その後抗VEGF療法により新生血管の活動性は低下したが、定期的に抗VEGFの硝子体注射が必要であり、4年後の現在の視力は右眼=0.3、左眼=0.02である。
 加齢黄斑変性症は黄斑部に脈絡膜からの新生血管が増生し、黄斑部を障害するため社会的な失明に至る病気である。発症には加齢性の変化に加え、活性酸素が関与していると言われ、活性酸素を体内に増やすと言われている喫煙や欧米型の食事を改善することが予防となる。また、活性酸素が黄斑部に悪影響を及ぼすのを防ぐためにサプリメントであるルテインが勧められる。ルテインはケールなどの緑色の濃い野菜に多く含まれているため、普段から緑黄色野菜を多くとることが予防となる。また、加齢黄斑変性症の進行にはVEGFが関与していると言われており、VEGFを捕獲してくれる抗VEGFの硝子体注射が有効な治療となっている。

参考文献