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耳鼻咽喉科

74歳男性、右上顎洞真菌症(非侵襲性副鼻腔真菌症)附属病院耳鼻咽喉科 大久保公裕

概要

当科初診の約1年前から鼻汁、後鼻漏が出現し近医耳鼻科を経て総合病院耳鼻咽喉科に通院していた。当時は他県に在住していたが、転居を機に当科に紹介受診した。
前医では右上顎洞真菌症を疑われ、複数回のシュミット針による上顎洞洗浄を行い、症状・画像所見とも軽快しているとのことであった。手術の話はなかったようであった。
合併症は白内障の点眼治療のみであった。

初診時現症

【初診時現症】
〈一般身体所見〉
身長162㎝、体重57kg。
鼻内所見では右に凸の鼻中隔湾曲症と右中鼻道に小さい単発性鼻茸を認めた。病的な鼻汁は認めなかった。

主な検査所見など

〈血液検査〉
血液一般生化学検査正常
非特異的IgE 24IU/ml(170以下)
特異的IgE(クラス) スギ2、真菌に対するIgE陰性。
〈鼻汁検査〉
鼻汁好酸球数 (-)

〈画像検査〉
副鼻腔CT:右上顎洞に軟部陰影と、その内部に不整石灰化を認める。左上顎洞にも軽度の粘膜肥厚を認める。

診断と鑑別診断

一側優位の副鼻腔炎の場合には副鼻腔真菌症や歯性上顎洞炎、乳頭腫などの良性腫瘍、また癌などの悪性腫瘍の可能性を常に念頭に置くことが重要である。この症例では悪性腫瘍や侵襲性副鼻腔真菌症に伴う骨破壊はみられず、軟部陰影内に真菌塊を反映する不整石灰化を伴う事から非侵襲性副鼻腔真菌症が最も考えられる。

CT検査で篩骨洞優位の陰影を認める。

治療方針

副鼻腔真菌症の治療の中心は内視鏡下鼻副鼻腔手術による真菌塊の摘出と病的粘膜の除去、鼻副鼻腔形態の改善と換気の改善であることを説明し、これまでの治療で治癒しておらず、重大な併存疾患もないことから手術の方針とした。

治療経過の総括と解説

副鼻腔真菌症には骨を破壊し周辺組織に浸潤する侵襲性副鼻腔真菌症と、周囲組織に浸潤しない非侵襲性副鼻腔真菌症に大別される。侵襲性副鼻腔真菌症は免疫能の低下した日和見患者に比較的多く見られ、眼窩や頭蓋内に浸潤し視機能障害や頭蓋内合併症により致命的となることもまれではない。大部分が非侵襲性であるが、投薬治療では改善が乏しく内視鏡下副鼻腔手術による真菌塊の除去と洞内の換気が重要となる。原因真菌はアスペルギルスが最も多いとされている。真菌症のほかのタイプに真菌に対するアレルギーによって発症するアレルギー性真菌性副鼻腔炎も存在する。一側性に発症することが多い点は本症例と合致するが、真菌に対する特異的IgEが陽性となり、鼻汁中に好酸球浸潤を認める点が本症例と異なる。本症例は非侵襲性副鼻腔真菌症と判断し、全身麻酔下に内視鏡下鼻副鼻腔手術を行った。CT画像どおり右上顎洞内に真菌塊を認め除去した。真菌塊からはアスペルギルスが同定され、アスペルギルスによる副鼻腔真菌症と確定した。術後の経過は良好で再発なく外来経過観察中である。

参考文献