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中医学の最新感染症対策

感染症の伝統中医学は固定された鍼灸理論ではなく西洋医学に勝る発展もあります。「中西医結合」の重要性をも提示した次の論文を参考にし、進捗状況を確認しましょう。
私の長年の友人である北京御源堂の徐文波先生によると(※)、最近の中国伝統医学(中医学)は、マラリアや SARSといった感染症治療に積極的な成果を発表しており、この中医学の発展に、世界保健機関(World Health Organization;WHO)は単なる代替医療としての治療以上に大きな期待をかけているとのこと。ちなみにSARSの最新の研究者の一人は、新宿漢方クリニックの顧問であり北京中日友好病院呼吸器部門の張先生です。

※桜花学園大学人文学部 研究紀要 第13号 2011-87-

東洋医療

軍配中国伝統医学における感染症

3000年程前の春秋戦国時代(紀元前770~紀元前221年)に著された古典『黄帝内経』は中医学の基礎です。人間も病原体も自然の一部分で、ともに天候と地理の影響を受けている。疫病の発生もそれと密接に関係してくるとの認識です。
「五運六気」理論により疫病が発生しやすい年月、地域、病状の特徴、進展規律が推測され、対応する治療原則、治療経験などが存在します。感染症を征服する正気(生体の恒常性)の調節作用、特に神経系、免疫系、内分泌系等の生体システムのバランスの異常を正常に戻す働きを重視しています。
張仲景がまとめた『傷寒論』という中医感染症の本では急性伝染病が分類され、治療方針、治療用薬剤とその処方が確立されました。それは臨床聖書といわれるぐらい高い評価を受けています。

感染症と「五運六気」学説

(1)天体、気候、物、病の関係及びその規律についての学説
「五」の周期(木・ 火・土・金・水-五運)と、「六」の周期(風・寒・暑・湿・燥・火-六気)を用い、宇宙運行の規律を推測します。地上に生きる人間と太陽、月は密接に関係していると認識していました。即ち人と自然現象、地理とも関係しているとの認識です。医療に応用するなら、治療時間学、空間学となります。例えば、各年の特徴を五行の周期で「天干(十干)」と言います。「地支」(十二支)を合わせその年の特徴を表わすことになります。

(2)中医治療の原則
解表―発汗によって生体の恒常性を取り戻し、体表から侵入した外因を取り除きます。こうして解毒効果がある漢方薬を豊富に使うため、病原菌の種類に限らず利用できます。また体の内部環境を整える「扶正」治療はステロイド剤の投与よりも副作用が少ないです。

(3)感染症別対策
1)結核
結核は「癆病」と呼びます。現在結核の治療には基本的に抗生物質を投入しますが、最近結核の発病率が高くなり耐性菌もみられます。また抗生物質による副作用が強いため中医治療を希望する患者が増えています。病初の段階で抗生物質と併用すると、相乗効果が得られます。また、中薬(漢方)には結核の微熱、倦怠感、咳などの症状を改善できる(百部、白芍、冬虫夏草、夏枯草、黄連、黄柏、金銀花等)。薬剤耐性結核、特に高齢者の治療に効果が得られます。中薬や鍼灸の治療で免疫力を高め、結核の再発を予防することもできます。またストレス解消、睡眠などの養生も結核治療に不可欠です。
2)インフルエンザ
中薬を最初の治療選択として使用することで抗ウイルス効果、免疫調節効果、人体リズムを取り戻すなどの総合効果が得られます。インフルエンザについては、その種類によって使う薬と処方も変えます。昨年発生したインフルエンザへの対応薬として中国政府が推奨する「蓮花清瘟カプセル」は、タミフルと同等の効果があります。同カプセルは中医理論に基づき、抗菌坑ウイルスの漢方薬であるのに加え、解熱や免疫を調節する薬も配合されています。
3)マラリア
中医学では「瘧疾」と呼びます。紀元340年、青蒿を使ってマラリアを治療する記載が残っています。70年代に青蒿素(チンハオスー)と もよばれるアルテミシニンおよび関連化合物が見出され、特に90年代にアーテメター/ルメファントリンの合剤コアルテム(Coartem-Novartis 社製)が開発され、非常に良好な治療薬としてWHOから推薦されました。マラリア原虫を殺し症状を抑え持続効果及び治癒率が高いと世界各国から好評を得ています。

感染症の治療に関する要点

1)西洋医学的病名診断も不可欠です。それに加えて
2)中医的な症状分析が重要です。
3)中薬の早期投入により症状緩和、発熱時間の短縮、病状悪化を防ぎ、後遺症の減少、西薬の副作用の減少を図ることができます。
以上により
「中西医結合」の医療システムを確立してこそ、感染症に対し大きな力になると言えます。