はじめに
天津中医薬大学教授 付属第一医院元院長
一般社団法人老病研究会顧問 韓 景献
社会の進歩と共に人類の寿命が明らかに長くなり、疾病の種類にも大きな変化が生じつつあります。認知症、パーキンソ病、がんなどの慢性病は、老年症候群も含め治りにくい病気であり医学上の重大課題となりました。これらの病気の原因は不明なことが多く、詳細なメカニズム分からず根本的な治療方法もありません。
世界には、西洋医学を中心する現代医学と中国医学を中心とする伝統医学があります。それぞれ観察する立場が違うこともあり、それぞれの臨床には長点と短点があります。西洋医学は病状を基本とし、中医学は証を基本として病気を認識します。
西洋医学は人体の解剖、組織・生理・生物化学に基づいて、細かく局部の変化を強調します。一方 、中医学は自然哲学の陰陽五行の規律の中で、人体の生理機能を解釈し整体統一観念を重要視します。
西洋医学は現代科学にそって発展してきましたが、中医学は中国5,000年の経験医学に基づく歴史を持ちます。両者は長い臨床でのエビデンスにより有効性が証明されてきました。西洋医学はどちらかと云えば急性の病気によく応用され、中医学は慢性の病気に効果を発揮します。ですから中西医結合(中医学と西洋医学の融合)はベストの選択となります。
臨床において慢性疾患や難病で西洋医学の治療法がない場合、中医学が素晴らし解決法であることを知るに至りました。これは中医学と西洋医学の考え方の違いに基づきます。国境がない医学界において中医学は一つの宝物といえます。引き続しっかり伝承し、更なる研究をしなければならないと考えています。
川並汪一教授は鋭い感覚で現代医学と伝統のよさを理解されておられます。 認知症治療に有効な三焦鍼法を2009年に日本に取り入れ世界で初めて認知症Gold-QPD育成講座を開講しました。全国ですでに170名ほどの鍼灸師と医師を育てました。彼らはこの鍼法で認知症の周辺症状の治療に素晴らしい結果を出しております。これは中西医結合のすばらしさを十分に証明されたことになります。
老年症候群を中心とした東西融合医療のまとめは中西医結合のハイラトになります。 高齢者疾患群の臨床診断と治療において必ず大きな貢献をするものと信じます。